あなたのやり方は正しい?脳科学から見た物理の学習法

脳科学

難しい物理の授業……ちゃんと理解できた!

……はずなのに、試験ではさんざんだった、、、というような経験はありませんか?

  • きちんと授業を聞いて理解したつもりなのに試験がぼろぼろ
  • わかるけどできない

これらは受験生によくある悩みです。

本当は難しくない!高校物理を簡単にするたった一つのポイントとは?

この記事にあるように、物理学は公式を暗記してただ当てはめるものでは決してありません。そこには、根本となる原理があります。

したがって、その根本を理解する、少なくとも理解しようと努めることが大事であることは、この記事で述べられている通りです。

物理の学習段階

物理を学習していく段階について、例えば以下のようなケースを考えてみます。

  1. 先生が言っていることも教科書の内容も意味不明
  2. 「重い物ほど速く落ちる」のような、自然に対する自分の素朴な感覚を修正する
  3. 教科書・授業にしたがって新しい自然観を得る
  4. 授業が分かるようになり、物理の楽しさに目覚める

たとえ出発地点では何も分からず意味不明であっても、勉強をしていくにつれてこのような段階を踏んでいければ理想的ですね。

しかし、物理の受験生にとってはこのあとにもう一つ、大事な段階があります。

それは・・・「試験で高得点が取れるようになる」ですね。

【物理】センター試験はここを押さえて満点を狙おう!

特に、大学受験の物理は、難関といわれる大学になるにつれ、高度な数学的・物理的思考を要求されるものです。

そのため、高得点を取れるようになるための、もう一段階を経る必要があります。

「分かること」と「できること」

よく言われることですが、「分かること」と「できること」は少し違います。

とある数学の大学教授の話です。

教授がまだ大学生であったころ、ある同級生が、

「数学の授業はすごくよくわかる・・・。だが、試験はまったくできない!」

と嘆いていました。

その彼は、数学をあきらめ、哲学の道に進んだそうですが、かの教授曰く

「そんなことは当たり前なんですよ。数学がわからない、なんていうやつは相当なバカでありまして・・・、その上で数学を解けるというのは才能がいるんです・・・」

物理学でも「理屈はわかった。でも、試験が・・・。」という段階の人は多く見られます。

私は、物理を理解できたけど問題ができない人を「バカ」とは思いません。それどころか、かなり頭のいい人だと思います。
自らの素朴な自然観を克服し、過去の天才たちが築いてきた科学の思考方法を理解できたのですから。

ですので、あと一息踏ん張って物理の受験脳を作り上げましょう。

暗記は必要か?

このことに対する答えはもちろん、イエスです。
暗記を軽視するべきではありませんし、物理の問題を解くにも暗記はやはり必要です。

「いやいや、物理は公式を暗記して当てはめるものではないと言ったじゃないか」という声が聞こえてきそうです。

しかし、物理の公式など覚えるうちには入らないのです。少なくとも現象をきちんと理解できれば、公式は自分で作れるものがほとんどになります。(電磁気以降の現代物理では、式を導出すること自体が難しく時間もかかるので、大学受験においてこのあたりを暗記する必要があるのは致し方ないところもありますが、しかしその場合もできうる限り、一度は背景と式の導出を考えるべきです)

近年の大学入試における物理は、昔とは違ったさまざまな問題が考えられています。しかし、物理学としては基本的なところは変わっておりません。

ここでいう暗記とは、単なる公式の暗記だけではなく、もう少し違うニュアンスの暗記を指しています。
次で考察してみましょう。

現代の受験物理に対応するためには

受験物理のためには、物理の本質・物理の考え方を身につけた後、「物理を理解した頭で良問を自分で解く」という作業が何度も必要です。

そして、「こういう問題に対してはこのようなアプローチをする」ということを「覚える」のです。これはアプローチなので、解法を丸暗記するということとは違います。

解法の丸暗記では、似た問題しか対応できませんが、本質を理解した上でアプローチ方法を「覚える」場合、今まで見たことのない問題に対しても対処ができるようになります。

「物理問題のにおいを分かるようになる」という感覚でしょうか。
このあたりは自分で何度もトライして感覚をつかんでほしいところです。

しかし、一度アプローチ方法を覚えても、当然忘れてしまっては本番で役に立ちません。
そのため、記憶の特性について知っておく必要があります。

短期記憶と長期記憶

人間の記憶には主にこれらの二種類があると言われています。

この短期記憶はコンピュータで言うところの揮発性メモリみたいなものです。つまり、電源を落とせば消えてしまいます。
それに対して長期記憶はハードディスクに例えられるでしょう。電源を落としても、記憶は保持され、いつでも呼び出すことができます。

私たちは日々、それらの両方を活用して生活しています。しかし、短期記憶に関してはその名の通り、短期でメモリが消えてなくなってしまうのです。

そのため、受験を乗り切るためには長期記憶として物事を保存する必要があります。しかし、脳の能力には限りがあるため、日々で短期記憶としたものの全てを長期記憶にはできないといわれています。

そのため、脳は一時的に保存された記憶のうち、これは重要である、と判断したもののみを長期記憶の倉庫に入れます。

もしも、日々なにもかも忘れなければ、重要な事柄についての優先度も他と差別化されず、相対的に低くなってしまいそうです。これは、人間が生きるため必要な性質なのかもしれません。

海馬の役割

人間にとって、その記憶が必要か否かを判断するのが海馬と呼ばれる部位です。この海馬を無事通過できたものだけが長期記憶として残されていくと考えられています。

進化論を信ずれば、ヒトも他の生物と同じように原始の時代から進化をしてきているはずで、生き残るための壮絶な戦いを乗り越えてきたはずです。つまり、ヒトにとって生き残り、種を存続させることが生物としての最大の目的のはずです。

したがって、海馬の判断基準は「生きていくため、種を保存するため」が最優先になるのです。

例えば、一昨日に食べた夕食など多くの人が覚えていませんが、それが「地震による緊急避難先で食べる二日ぶりのおにぎり」であったなら、恐らく忘れがたいのではないでしょうか?

そうすると例えば、物理の問題の解法などは、そのままでは長期記憶にはなれそうもありませんね。英単語も少なくとも日本の高校生にとっては、直ちに生命にかかわる・・・というようなこともなさそうです。

余談ですが、日本語の全く通じない国への長期留学が、その国の言葉を覚える最短の方法であることは、このような理由からではないでしょうか。

記憶の達人たち

しかし、世の中には例外ももちろんあるわけで、以下のような人が知られています。

南方熊楠

By 寺島良安 Terajima Ryoan – en:National Diet Library, Japan, http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=41017077&VOL_NUM=00002&KOMA=43&ITYPE=0

南方熊楠という日本の偉人がいますが、ご存知ですか?

彼の幼いころの逸話に次のようなものがあります。

当時の百科事典とも言うべき「和漢三才図会」を知り合いの家で見せてもらい、それを暗記し、自宅に帰った後に記憶を呼び起こしてすべて模写した。

私は実物を南方熊楠記念館で見ましたが、絵まで非常に正確に模写していることに驚嘆しました(和漢三才図会は105巻81冊に及ぶ膨大なものです)。

キム・ピーク

また、アメリカ合衆国のキム・ピークは9,000冊以上の本を丸暗記していたといいます。映画レインマンのモデルともなった人物として有名です。

彼は、図書館に行き、本を手に取りページをすばやくめくってすぐその場で丸暗記できた。それはさながら、脳のハードディスクにコピーするかのようであったという。

彼らは特別ですね。

我々も彼らを見習って……と見たものをすぐさま暗記できれば良いのですが、私含め多くの方はそうではないでしょうから、次のことを心に留めておくべきでしょう。

長期記憶の獲得のために

長期記憶を獲得するには、関所である海馬をうまく騙してやればよいのでは?と誰しも思うはずです。そうです。海馬に、これは重要であると感じさせればよいのです。

そのために、何度も何度も物事を繰り返すというのが、現在考えられる最善の方法なのです。何度も何度も繰り返すことで海馬は、生命維持のために重要であると勘違いをして、長期記憶として貯蔵してくれるのです。

今日理解できたことを、解けた問題を、何度も何度も繰り返すのです。

繰り返すタイミングについては以下の記事で詳しく触れています。

一日経ったら三分の二も忘れている?復習の最適なタイミングを示す「間隔反復」とは?

天才ではない一般の人間にとってこれが学問の王道とも言えるものです。
何度やっても忘れます・・・と嘆くのではなく、忘れない長期記憶になるまで、何度でも繰り返すのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回のポイントは以下のようになります。

ポイント
  • 物理の学習のためには、理解することが必要
  • 「分かること」と「できること」は別。できるようになるためにも、また努力が必要
  • 単なる公式の暗記ではなく、アプローチを覚えることが重要
  • 短期記憶から長期記憶にするためには反復が最も有効

今回ご紹介した内容は、物理以外にも活用できるポイントが多くあります。
みなさまの勉強のお役に立てれば幸いです。

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